虚子句碑紀行 静岡県富士宮市沼久保
今回の虚子句碑紀行の最終回です。 下部温泉駅から身延線に乗り、約1時間で沼久保駅に着いた。ワンマンカーの運転手が、本当に降りるんですかと質問するぐらい駅舎も無く寂しい無人駅であった。車中も曇りで天気予報もそうであったので、今回は富士山が見えない旅と諦めていた。ところが、駅のホームを少し歩いた所から富士山がよく見えた。 虚子も、堤俳一佳と昭和33年4月に「裸子」100号記念大会で下部温泉に行く途中、ここで句を詠んでいる。堤俳一佳の句もある。 「ぬま久保で降りる子連れの花の姥 虚子」 「とある停車場富士の裾野で竹の秋 虚子(昭和33年4月13日)」 「沼久保の竹伐る頃富士に雪 俳一佳」 俳一佳の句碑は、下部温泉でもそうであったが、虚子の碑よりも、一段と小さいか、奥側に建てられている。俳一佳の虚子を敬った気持ちがよく出ていると思う。 虚子とは同じ4月の9日違いであるが、私も富士山が見えた喜びで一句。 「虚子と我同じ富士山沼久保で 重翁(平成22年4月22日)」 「善行に報いる虚子と春の富士 重翁」 次の電車まで40分ぐらいあるので、近くを散策した。駅の周辺には椿の木が多く、「沼久保百椿園」の表示があった。俳一佳が虚子の好きな椿をJR東海の有志と植えたようである。また、筍を取る人がいたり、シャガの花が咲いたり、静かな一時を過ごした。